マイクロプラスチックの何が問題かご存じですか?
脱プラスチックなんていうと、海の生物、とりわけウミガメへの悪影響がフォーカスされます。
しかし、実は私たちの健康にも影響するかもしれない重要な課題です。
今回科学雑誌Natureでマイクロプラスチックについて取り上げられてましたので、ご紹介したいと思います。
Microplastics are everywhere — but are they harmful?
マイクロプラスチックについてこの記事でわかること
マイクロプラスチックってそもそもどんなものか
目に見えないプラスチック粒子(直径5 mm未満)を指す言葉で、20年前からそのリスクについて懸念が示されています。
もともとは、歯磨き粉や洗顔料に含まれているスクラブなどがマイクロプラスチックの元として言われていました。
現在では
- 川、海にあるプラスチック製品(波などで破砕されるため)
- 衣類に使われているマイクロファイバーのホコリ
なども、マイクロプラスチックの元であると考えられています。
マイクロプラスチックはどんなものに含まれているのか
あらゆるもの全てに含まれています。
空気中や、飲水、食べ物、南極や北極の氷からも検出されています。
プラスチックが一般的に広まり始めたのは1950年ごろですが、100年足らずで地球上の隅々まで浸透していまいました。
環境科学者のなかには、人が1年間に摂取するマイクロプラスチックの量は
クレジットカード1枚分
に相当すると考えている方もいます。大体5 gだそうです。
・・・気持ち悪いですね。
マイクロプラスチックは人間への悪影響はありそうか
結論から言えば
と科学者は考えています。
マイクロプラスチックの毒性を示唆する研究には以下のようなものがあります。
投与量についての記載を見ても、1日当たり6 ~ 600 μgの量を5日投与して小腸炎が認められているようです。
600 μg × 365日 ≒200 mgなので、クレジットカード分(5 g)よりも少ない摂取でも小腸炎が起きるようですね。
(もちろんマウスは人より体が小さいので一概に比較はできませんが。)
マウス
ただし、マイクロプラスチックは
- スクラブ由来のもの(丸々したもの)
- プラスチックが破損してできたもの(おそらく尖っているもの)
- マイクロファイバー由来のもの(糸状のもの)
など、様々な形があります。
現在の研究では、主に丸々したマイクロプラスチックを用いて行われています。
そのため、実際のマイクロプラスチックの影響をちゃんと再現できていない可能性もあります。
もっと毒性が高いかもしれないし、低いかも知れません。
少なくとも
研究者
というのが多くの研究者の考えです。
しかし、将来的にはわかりません。
ある試算によると、2050年には
海洋プラスチック重量は、海にいる全部の魚の重量以上になる
とされています。
*現在でも魚の重量の20%も海洋プラスチックがあるとされています。
参考 The New Plastics Economy: Rethinking the future of plastics2021 世界経済フォーラム
それに伴ってマイクロプラスチック量は増加し、健康に悪影響を与えるレベルを越え始めるかもしれません。
マイクロプラスチックによる健康へのリスクを下げるためにできること
健康リスクがあるかも知らない以上、避けられる範囲で対策した方がよさそうです。
研究者らは
研究者
と提言しています。
赤ちゃんの粉ミルクを作るときも、プラスチック容器で作るのではなく、ガラス容器でお湯を使って溶かし、冷えたのちにプラスチック容器へ移すことが勧められています。
もちろん水道水や、おそらく粉ミルク自体にもマイクロプラスチックは微量含まれていると考えられますが、少なくとも容器からの溶出は防げます。
もしかしたら将来的には「温めてもマイクロプラスチックが出にくい」というセールス文句の容器、お弁当箱なんてのも出てくるかも…?
マイクロプラスチック問題で、脱プラスチック産業はもっと成長するかも
数年前から脱プラスチックに向けて各企業がプレスリリースを出しています。
スターバックスの紙製ストローへの段階的移行
参考 スターバックス国内店舗で、サステナブルな未来につながるFSC® 認証紙ストローでの提供を開始スターバックスマクドナルド、ディズニー、セブンイレブンなどもプラスチックストロー廃止にシフト
参考 ストロー廃止はなぜ?プラスチック問題の経緯や企業の取り組みをご紹介!SDGs media
脱プラスチックが与える産業への影響
プラスチックストローの廃止は
・紙製ストロー
・生分解性プラスチックストロー
へのシフトにつながります。
その点、紙製ストローを生産している日本製紙などには追い風かも知れませんね。
一方で、紙製ストローには
ふやける、味に影響する
などの評価もあるため、生分解性プラスチックを作っているカネカや三菱ケミカルあたりは成長が期待できるかも知れません。
参考 カネカ生分解性ポリマーPHBH® 年産5,000トンのプラントが竣工カネカ 参考 植物由来の生分解性樹脂「BioPBS™」三菱ケミカル
各社とも脱プラスチックへの貢献としてプレスリリースしていますし、株価にもその点すでに織り込まれているのかも知れません。
しかし、かねてからガソリン車から電気自動車へシフトしていくと言われていながら
2030年までにガソリン車廃止!
となると電気自動車関連産業の株価が上がりましたよね。
それを踏まえると、まだまだ成長の余地があるのでは?
結論:現時点で神経質になる必要はないが、長期的に注視が必要
海洋プラスチックの問題になると、ウミガメにプラスチックが刺さった画像、胃からプラスチックが出てきたなどのニュースが出ます。
もちろんそれらも重要な問題です。
私はダイビングをたまにしますが、プラスチックゴミを見ると一気に萎えます。
しかし、より直接的に
将来的に私たちの健康を脅かしかねない
という点を知る必要があると思います。
世界的に、レジ袋有料化や禁止化は大きな流れですし、脱プラスチックは脱炭素の次の課題であることは間違い無いです。
そう言うことを踏まえると、長期目線での投資先の選定にもつながるかも…?
今回もお読みいただきありがとうございました!
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