4月7日、ノーベル賞の登竜門ともいわれるガードナー賞の受賞者が発表されました。
受賞された方は以下の7人です。
2021年ガードナー賞受賞者
ジョエル・フランシス・ハベナー博士(ハーバード大学医学部医学教授)
イェンス・ジュール・ホルスト博士(コペンハーゲン大学保健医療科学部教授)
エリザベス・アイゼンハウアー教授(クイーンズランド大学非常勤教授)
それぞれの受賞した研究内容を見ていきましょう!
ガードナー賞とは?
カナダのガードナー財団により与えられる学術賞で、年に1度最大7名に与えられます。
創設者のガードナー氏は実業家で、50代の前半から重度の関節炎に苦しんでいたようです。
元々医学にも関心があったガードナー氏は、1957年
病気と、人々の苦しみを克服する研究を称えるために50万ドルを投じてガードナー財団を設立しました。
それ以来2021年までに、402人にガードナー賞を受賞し、そのうち95人がノーベル賞を取っています。
「2型糖尿病、肥満、腸疾患の治療に大きな進歩をもたらしたグルカゴン様ペプチドの研究に対して」
ドラッカー博士、ハベナー博士、ホルスト博士は、グルカゴン様ペプチド(GLP-1、2)を発見しました。
グルカゴン様ペプチドは血糖値調整に関わっています。
食事をすると、小腸からGLP-1が血中に放出され、GLP-1を認識した膵臓でインスリンの分泌が促進されます。
インスリンは血糖値を下げる役割があります。
そのため、GLP-1の発見は糖尿病薬の開発につながりました。
確認した限り、現在5種類の薬がGLP-1の発見に基づいて製造されており、これまでに1億人以上が治療に用いたとされています。
参考 GLP-1P受動態作動薬 薬剤一覧表糖尿病リソースガイドこれはノーベル賞とっても意外でもなんでもありませんね。
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「BRCA1遺伝子の変異によって乳がん発症率が増加することを発見し、がんの遺伝学と腫瘍学を変革したことに対して」
BRCA1遺伝子はがん抑制遺伝子です。
12%の女性は一生のうちに乳がんを発症しますが、変異したBRCA1遺伝子を受け継いでいる女性では発症率が72%に発症率が高まります。
出典:Kuchenbaecker KB,et.al.. Risks of Breast, Ovarian, and Contralateral Breast Cancer for BRCA1 and BRCA2 Mutation Carriers. JAMA. 2017 Jun 20;317(23):2402-2416. doi: 10.1001/jama.2017.7112. PMID: 28632866.
2013年、アンジェリーナジョリーが乳がん予防のため乳房を切除した、というニュースを覚えていますでしょうか。
アンジェリーナジョリーは自分の遺伝子を調べ、BRCA1遺伝子が変異型であると知ったために乳房切除の決断をしたそうです。
彼女の母親も56歳の若さで卵巣がんにより亡くなってしまっており、BRCA1遺伝子変異は卵巣がんのリスクを約40倍高めることが報告されています。
キング博士は遺伝性のがん遺伝子があることを証明し、BRCA1と名前を付けたのも彼女です。
これもノーベル賞とっても意外でもなんでもありませんね。
「アジアで新たに出現した新興感染症、特に鳥インフルエンザとSARSの発生を制御するための起源と選択肢の理解に大きく貢献したことに対して」
グアン博士とペイリス博士は、1997年に香港で発生した新型インフルエンザの発生源の発見とその拡大防止に貢献しました。
また、SARS、MERSの原因ウイルスの特定と、伝搬経路の解明を行いました。
当時も現在の新型コロナウイルスと同様に、野生動物市場が原因だったようです。
やはり当時も野生動物市場を閉鎖するなどで対応したようです。
今回の新型コロナウイルスでも当時の経験生かせばこんなパンデミックは・・・とも思いましたが、香港大学というポジションだから動きやすかったのかも知れませんね。
「新しい抗がん剤とデリバリーアプローチの調査、がんの臨床試験の変革をリードし、世界中の患者に影響を与えたがん治療の新しい基準を確立したことに対して」
アイゼンハワー博士の研究分野はドラックデリバリーシステムです。
ドラックデリバリーシステムとは、薬を狙った臓器に特異的に届ける技術で、副作用の少ない抗がん剤につながるため盛んに研究がされています。
彼女はタキソールという抗がん剤のドラックデリバリーシステムの開発に貢献し、彼女の方法は現在世界標準となっています。
彼女が受賞したガードナー ワイトマン賞はカナダ人のための特別枠です。カナダの研究分野への貢献とリーダーシップも併せて評価されたようですが、研究だけでも十分にすごい成果を挙げています。
これまでガードナー賞の受賞内容について調べたことはなかったんですが、確かにどれもノーベル賞級の研究ですね。
世界に与えた影響はすさまじいなぁ、こんな研究者になれていたらなぁ・・・
と、研究に携わっている端くれとしてすさまじい憧れがわきます。
今日もお読みいただきありがとうございました!
