Science系列の科学雑誌に、2021年3月31日このようなタイトルの論文が掲載されました。
原題:Processed foods drive intestinal barrier permeability and microvascular diseases
加工食品は腸のバリア機能を低下させ、微小血管の疾患を誘発する
というタイトルです。
個人的にはこの手のタイトルは好きではありません笑
加工食品は悪、天然食品は善 みたいな、脊髄反射的結論ありきな印象だからです。
人工物でも薬のように体にいいものもありますし、天然由来の毒だって無数にあります。
しかし、Science系列の雑誌、impact factorも13くらいありますし、少なくとも実験的にはまともな研究プロセスを経て得られた結論なはず・・・ひとまず読んでみましたので、ご紹介します。
(impact factorは雑誌の影響力を示す指数で、13は十分に高いです。)
この論文でいうところの「加工食品」とは
筆者らが問題視しているのは、終末糖化産物(AGE)という成分です。
非常におどろおどろしい名前ですが、要はメイラード反応により産生される成分の総称で、お菓子作りや料理を趣味にする人は特にメイラード反応を知っていると思います。
食品を加熱することにより発生する成分で、一般的に「焼けたいい匂い」とか、「焼いた後のスポンジケーキの色の変化」などはメイラード反応によるものです。
加工食品というと「食品メーカーが作るもの」って印象ですが、おそらく今日皆さんが料理した過程でもAGEは作られています。
すでにこの成分が体にあまりよくないことはwikipediaレベルで掲載されていました。
どんな実験をしたか
AGEを多く含む餌にするため、通常の餌を60分加熱してメイラード反応を起こさせた餌を作成しました。
*この時加熱によりビタミンが壊されないように注意したようです。
ラットに対して24週間(約半年)摂取させました。自由に餌を食べさせたようですが、摂取量が摂取カロリーはAGEの有無で変化は認められなかったようです。
そうすると、AGEを多く含む餌を食べたラットでは、腎臓の慢性炎症が認められました。
次に、この炎症がAGEにより引き起こされているのかを確認するため、AGEが生体で反応するのを阻害する薬(塩化アラゲブリウム)を投与すると、腎臓の慢性炎症が抑えられました。
このことから、AGEが腎臓の慢性炎症の原因であると示されました。
腎臓炎がどんなのかいまいちピンとこない方、ぜひ
はたらく細胞BLACK』第6話「腎臓、尿路結石、涙。」を見てください。
この論文で検証した内容のまとめ
・AGEが腎臓の慢性炎症の原因である。
・AGEにより、腸内細菌由来の炎症誘導成分が血中に入りやすくなる。
・AGE摂取群と通常食摂取群では腸内細菌の種類が変わっていた。
・難消化性デンプンを併せて摂取することで、AGEによる腎臓の慢性炎症は抑制された。
こういう研究が人類の寿命を促進するかも?
“Processed food”、加工食品という書き方から、食品企業を批判する内容かと思いましたが全然違いました。
私たちの普通の料理でも発生する成分が、実は私たちの体にとってあまりよくないかも、という内容でした。
最初に酷評してしまい大変申し訳ありませんでした。脊髄反射していたのは私のほうです。
正直、加熱することで発生してしまうことから、相当努力しない限りAGEを食卓から除くことは困難です。
重要な結果は、難消化性デンプンを併せて摂取すると腎臓の慢性炎症が防げた、という点でしょうか。
wikipediaレベルの情報だと、ヤマイモやナガイモに多く含まれているとか。
どれくらい効果を得るために食べる必要があるのかわかりませんが・・・
そのうちこの研究成果を元に企業がサプリとして販売してくるかもしれませんね。
似ていますが、難消化性デンプンは難消化性デキストリンとは違うもののようです。
普段食べているものの中で、実は体に悪い、というものが見つかっていくのは少し怖い面もありますよね。
しかし、それらに対処すれば、もっと人類は長生きできるようになるかも?
今回もお読みいただきありがとうございました!!
Podcastで配信も始めましたので、よろしければそちらもお聞きください!
#7 加工食品は慢性腎臓病を誘発する? どんな食べ物を食べれば病気になるリスクが低いのだろう
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