科学の世界における人種差別について 臨床試験に携わる人が学んでおくべき負の歴史

Cell誌のアーカイブを閲覧していたら興味深い社説に出合ったので紹介します。

Science Has a Racism Problem

正直この記事を読むまで

「科学の世界に人種差別ってそんなにあるか?」

といった感覚を持っていました。

ただ、読んでみると

臨床研究の知見はヨーロッパ系の人々を中心に得たデータがほとんどで、アフリカ系の人々由来のデータが欠如している

という指摘がされていてハッとしました。確かに。

社説では以下の2点が例として挙げられていました。いずれもアメリカでのデータです。

・妊娠中のアフリカ系女性はヨーロッパ系女性よりも死亡する確率が5倍も高い

・アフリカ系乳児はヨーロッパ系乳児よりも死亡する確率が2倍も高い

アメリカではアフリカ系よりもヨーロッパ系のほうが所得が高い傾向があるため、所得による影響だと今まで納得してきました。

しかし、実際本当に所得だけで本当にすべて説明できるのかな?とこの記事を見て考えるようになりました。

もしかしたら、医療自体がヨーロッパ系に最適化されていて、アフリカ系にはあまり適切ではない薬や治療法などもあるかもしれません。

新型コロナウイルスワクチンに関するニュースで「ヨーロッパで開発されたワクチンが日本人に合うのか、副反応などは生じないのか」といった議論もよく聞きますよね。

実際「アナフィラキシーショックが出た割合が欧米に比べて高いように思われる」と河野大臣がコメントをしていましたよね。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210310/k10012907401000.html

この件に関しては、日本のアナフィラキシーショックと判定する基準が海外よりも緩いから割合が高く出るのでは?といった意見もあります。

人種毎の有効性と副反応の割合を臨床開発時点で評価していれば、人種差なのか判定時基準の問題なのか明らかにできたんでしょうが、普通評価しないんでしょうね。

緊急性の問題から新型コロナウイルスワクチンは審議がそれほどされずに承認されましたが、

基本的には海外での薬を日本での使用を認めるかは、日本人を用いた臨床試験などでしっかり審査されます。

*これはこれで「ドラッグ・ラグ」という問題にもなっています。「海外で承認されているんだから早く国内の患者に届けろ、変な規制はやめろ!」っていう意見ですね。

この規制の根拠から考えると、

ヨーロッパ系もアフリカ系もアジア系も同じ治療法です。

臨床データはヨーロッパ系の人でしかとってません。

 

 

 

 

 

 

 

というのは確かに。。。問題ですね。

 

かつて科学の世界でも起こったひどい人種差別

この社説では2つの例を挙げていました。

1.アフリカ系女性から摘出した癌細胞を使って無断で癌細胞株を樹立し、研究していた。

 

2.アフリカ系の人をタスキーギ梅毒実験という「アメリカ合衆国の歴史上おそらく最も忌まわしい生体治療の研究実験」に利用した。

1に関してはHeLa細胞(ヒーラ細胞と呼びます)として今でも癌研究の界隈ではよく使われている細胞です。
私もこの本に出合うまでHeLa細胞の成り立ち、倫理的問題性については全く知りませんでした。

患者の死後今年で50年になりますが、現在もこの細胞は世界中の研究室で生き続けています。


2に関して私は知らなかったのですが、タスキーギ梅毒実験とwikipediaで検索すると相当読み応えのある内容が記載されています。

wikipedia:タスキーギ梅毒事件

ナチスのユダヤ人虐殺を非難した国が、自国内でこんな残酷な人種差別をするのかと驚きもあります。

研究に興味があるのであれば、研究の負の歴史についても学んでみるのも必要かも知れません。現在では倫理委員会の審査などで臨床試験の実施は厳しく管理されていますが、なぜそこまで管理するのか大変よく理解できます。

 

人種差を考慮した薬等の研究と、オーダーメイド医療の進展は車輪の両輪のように両方並行して進める必要があるかもしれませんね。

過去記事:2030年のオーダーメイド医療はどうなっている? これから成長してく医療分野についての考察

 

今回もお読みいただきありがとうございました!

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