【基盤S研究シリーズ3】 植物ミトコンドリアを改変した育種方法 そのうちスーパーに並ぶかも

2019年10月に「ゲノム編集食品が解禁された」というニュースが広まりました。

これも前回紹介したCRISPR/Cas9の影響です。

過去記事:【最新研究】将来は一度飲めばしばらく薬を飲まなくてもよくなる? 最先端の研究状況について紹介

個人的にこのゲノム編集食品の登場には興味があったので覚えていたのですが、皆さんどの程度認識されているのでしょう。

ゲノム編集食品は、遺伝子組み換え食品と似ているようで大きく違います。

今回紹介する植物ミトコンドリア改変育種はゲノム編集食品に該当します。

その違い、このミトコンドリア改変育種の面白さについて紹介します。

 

コロンブスの卵 植物ミトコンドリア改変育種

私たちの細胞は2種類のDNAを持っています。

1つはゲノムDNAで、私たちの体の情報はほとんどこれに記録されています。

もう1つはミトコンドリアDNAです。ミトコンドリアはエネルギーを作ってくれる大切な細胞内の小器官ですが、ミトコンドリアは進化的に別の生物だと言われています。

進化の過程でミトコンドリアが細胞内に入り込んで共生関係になった、と言われています。

植物はこれに加えて葉緑体DNAも持っています。

今回紹介する研究を行ったのは

東京大学・大学院農学生命科学研究科 

堤 伸浩 教授 です。

現在農学研究科長・農学部長をされているようです。

 

普通、ゲノム編集というとゲノムDNAをいじくります。

ミトコンドリアをいじくるという発想はあまり出てきません。(少なくとも私は笑)

確かに、ゲノムDNAは核内にあって、ミトコンドリアDNAはミトコンドリアにあるので、同じ手法で改変できるのか?問題もあります。

おそらく堤先生たちもこの点苦労されたのかもしれません。

2019年にこの手法に関する論文を投稿されています。植物ミトコンドリアDNAの改変は世界で初めてとのことです。

論文タイトル:Curing cytoplasmic male sterility via TALEN-mediated mitochondrial genome editing.

この手法はTALENというCRISPR以前によく使われていたゲノム編集用のタンパク質を使って研究されています。

2014年ごろからすでにCRISPRは研究業界で一般に使われていたんですが、あえてTALENを使っているあたりにいろいろ泥臭く試行錯誤した結果感が滲んでいます・・・

そもそもイネやナタネといった植物を用いた研究は生育にも時間がかかるから、トライ&エラーにもすごく時間がかかるんだろうなとも思います。

こういう地道感は個人的にグッときます笑

この2019年の報告以前は植物のミトコンドリアDNAについて、狙った遺伝子領域を破壊する技術がなかったため、未解明の面が多々あるとのことです。

あるミトコンドリアDNAの遺伝子領域が栽培上不向きであるとわかったら、その領域を破壊した作物を作れるようになります。

マジすごい

 

ゲノム編集食品と遺伝子組み換え食品の違い

イネを使って例を挙げてみます。

イネの遺伝子の中に、「米が落ちやすくなる遺伝子」があるとします。

野生の植物だったら、米(種)がぽろぽろ落ちてくれた方が繁殖には有利です。

しかし、農業する上ではぽろぽろ落ちられたら回収しにくくてたまりません。

この「米が落ちやすくなる遺伝子」を意図して破壊したとすれば、それはゲノム編集食品です。

「米が落ちやすくなる遺伝子」の代わりに「別の植物が持っている米が落ちにくくなる遺伝子」を組み込んだらそれは遺伝子組み換え食品です。

似ていますが、実は大きく違います。

遺伝子の破壊は自然界でも常に起きています。ゲノム編集はそれを意図的に狙って起こしただけです。

しかし、「別の植物が持っている遺伝子を組み込む」ことは、自然界では起きません。(厳密には超超超低確率では起きますが)

ゲノム編集のような現象は自然界でも起きるから、2021年3月時点では日本、アメリカではゲノム編集食品は「安全性審査」の必要がありません。EUは審査が必要としているようです。

遺伝子組み換え食品はもちろん安全性審査が必要です。

加えて、遺伝子組み換え食品は「遺伝子組み換え」を表示する義務がありますが、ゲノム編集食品は表示義務がありません。

この辺は以前NHKがクローズアップ現代で取り上げていて、ホームヘルパーにまとまっているのでリンクを貼っておきます。

https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4331/index.html

 

やはりこの辺は抵抗ある人も多いところかなぁというのもわかります。

個人的には遺伝子組み換え食品もゲノム編集食品も全然気にせず食べますがね。

好む好まないは置いておいて、将来食物生産量が不足する事態に備えて、こういう研究はぜひ発展してほしいなと思っています!!

今日もお読みいただきありがとうございました!

Podcast:https://anchor.fm/13381/episodes/5-S-DNA-eu6ir6

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