1944年から1945年のオランダは
ロックダウンのような状況だった
1944年から1945年のオランダの一部地域では、ナチスによるロックダウンが行われていました。加えてその年は厳冬で、ひどい食糧難が起こったことが記録されています。私たちは大体2000 kcalほど一日でエネルギーを摂取していますが(私はたびたびオーバーします)、当時は400~1000 kcalほどしか摂取できないほどだったそうです。しかもそれが数か月に及んだとのことですので、相当苦しい期間だったでしょう。400 kcalって菓子パン1つのカロリーですからね。
戦争の終結後に調査した結果、当然そんな栄養が乏しい環境下で生まれた赤ちゃんの多くが低体重でした。
しかし、その後の追跡調査で、低体重で生まれた赤ちゃんたちは成人後、肥満になる割合が他の世代よりも高いことか明らかになりました。
え?逆じゃないの?という印象ですよね。
低体重で生まれた子供は肥満、糖尿病、高血圧、
脂質異常症になりやすい
第二次世界大戦の飢餓が胎児に与えた影響から、「胎児期の栄養状態が将来に渡りその子の健康状態に影響を与えるのでは?」という仮説が立てられました。
その後、David Barker博士らの臨床研究により、低体重で生まれた子供は肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などになりやすいということが発表されました。
太りやすい私からすると「余計なことしてくれたな」という感じですが。
この変化も前回紹介した内容と同じで、エピジェネティクスな変異と考えられています。胎児になっている時点で親からもらった遺伝子は決まっていますから、あとはどの遺伝子を、どこの組織で、どのくらい機能させるか、をエピジェネティクスな変化で制御していると考えられています。
コロナ禍に胎児だった人たちはどうなるんだろう
少なくとも日本では当時のオランダのような強烈な栄養不足にはなりませんでした。また、欧米との比較ですが、日本のロックダウンとか緊急事態宣言とかは非常に緩いものでしたよね。
なので、個人的にはそんなに影響はないのかな?と楽観視しています。
しかし、運動量が減る、日を浴びる頻度が減る、ストレスがたまりやすい環境下である、といった変化は確実に起きています。これらによる影響は30年や50年後わかるのでしょう。
参考:驚異のエピジェネティクス(羊土社)
Fetal Origins of Adult Disease