漫画に相手の能力を奪う、コピーする強敵って出てきますよね。
HUNTER×HUNTERのクロロ=ルシルフルとか。
NARUTOのカカシ先生や、食戟のソーマの美作昴のような途中から強(?)敵というのもいますが。
転生したらスライムだった件のリムルも食べた相手の能力を使えるようになるのでこのタイプでしょうか。
今回の例はリムルが一番近いかも?
2021年3月25日のCell誌にそれを彷彿とさせる論文が乗っていたので紹介します。
論文タイトル:Whitefly hijacks a plant detoxification gene that neutralizes plant toxins
中国農業科学院のYoujun Zhangらのチームによる研究です。
ざっくり概要を言うと、コナジラミという害虫は本来植物が持っているはずの「植物毒の解毒遺伝子」をゲノム中に持っていて、それのおかげで毒をもった植物を食べても大丈夫、という内容です。
植物にしたらたまったもんじゃないですよね笑
しかも、この解毒遺伝子を作れなくしたコナジラミが毒をもった植物を食べるとほとんどすべて死んだということなので、進化上相当重要な遺伝子だったようです。
遺伝子がほかの生物に取り込まれる例について少し細かく紹介します。
遺伝子の水平伝播 他の生物の遺伝子を取り込む例
例えば、ヒトのPeg10遺伝子、Peg11遺伝子は進化の過程でウイルスからゲノムに取り込んだと考えられています。
引用:https://www.thermofisher.com/content/dam/LifeTech/japan/home-page/online-magazine/no48/next48.pdf
また、コーヒーノミキクイムシは細菌のもつ消化酵素を自分のゲノムに取り込んだことが示されており、栄養を吸収しやすくなることで生存に有利に働いていると考えられています。これも2012年の報告なので比較的新しいですね。余談ですがコーヒーノミキクイムシは名前の通りコーヒー豆の害虫で、全世界でコーヒー収量を最大80%減させた恐ろしい存在です。
論文タイトル:Adaptive horizontal transfer of a bacterial gene to an invasive insect pest of coffee
微生物-微生物間の遺伝子のやり取りに関しては昔からプラスミドDNAを受け渡すことが頻繁に行われていることが知られています。これにより、薬剤耐性を持ってる微生物が、持っていない微生物に薬剤耐性遺伝子を渡しているといわれています。
引用:https://amr.ncgm.go.jp/medics/2-1-2.html
ただし、植物-昆虫間での遺伝子のやり取り(植物からしたら一方的に奪われたというのが正しいかと思いますが)については、今回の報告が初めてのようです。
微生物-微生物間はプラスミドDNAが容易に次世代に受け渡されますが、多細胞生物の場合生殖細胞に取り込まれないと次世代に引き継がれないため、発生頻度は非常に低いのでしょう。おそらくウイルスなどの仲介者がいた可能性が考えられます。
非常に長い間の植物-昆虫の攻防で獲得された遺伝子なのでしょう。ロマンを感じる。
ただし害虫がこうやって進化していくと考えるとまぁそれはそれで・・・
今回も読んでいただき、ありがとうございます!
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