すごく面白い研究が2021年3月5日のScience誌に掲載されました!
論文のタイトルは「C. elegans discriminates colors to guide foraging」
何がすごいかって、線虫は目がありません。
多くの生物は、目の中にオプシンというタンパク質を持っていて、複数のオプシンが合体してできたロドプシンという構造体が色を感知しています。
線虫はこのオプシンすら持ちません。
なのに線虫は色を識別できるそうです。
人間は赤・緑・青の3色の比率ですべての色を見分けている
「光の三原色」って言葉は聞き覚えがありますよね。
パワーポイントで図を作ったりするときに気づくのですが、R(赤) G(緑) B(青)の比率を調整することで色を指定できます。
これは私たち霊長類のもつロドプシンが、赤、緑、青の波長に反応するタイプであるためです。
ほかの生物、魚や鳥なんてのはまた別の波長に反応するロドプシンを持っているため、我々とは異なる色の認識をしていることでしょう。
(参考:NATIONAL GEOGRAPHIC)
紫外線を利用したアゲハ蝶の擬態術なんていう私たち人間が識別できない紫外線を用いた鳥と蝶の攻防なんて研究もあります。
当たり前のように見ている世界ですが、他の動物には違うように見えているのでしょう。
私たち人類のパートナー、犬や猫は緑色に反応するロドプシンを持っていないので、「こいつなに見てんだ?」と考えているときもあるかも知れませんね。
どうやって線虫が色を識別しているとわかったか
線虫は1 mmほどの、ハエや蚊よりも小さい生物ですが、エサの選り好みをすることで知られています。
今まで食べていた餌と違うと前の餌を探してうろうろしたり、以前食べて体調が悪くなったらその餌を食べなくなる、などと知的な一面を見せます。
腹が痛くなるかもしれないのに牡蠣を食べる人間より賢いかもしれません。
今回の研究は、微生物が作った青色の毒素を避けた、という観察からわかったそうです。
元々線虫は土の中で生きている生物ですので、光があまりない環境で生きています。
なので、匂いに対する感受性が高いことは知られていました。
近年「線虫でがんの診断を」というニュースを聞いたことありませんか? その診断は線虫の匂いに対する感受性を利用した研究です。
そんな線虫が、実は色を識別して行動をしている、というのは驚きでした。
本日もお読みいただきありがとうございました!!